2月8日。
想定外の積雪で、悲喜こもごもの一日だった。
交通機関が乱れた上に、車での外出もままならず、
きょうは終日自宅で過ごした人も多かったに違いない。
一方、子どもたちはうれしそうだった。
そもそも県南で、こんなに雪が積もることはめったにない。
この機会を逃すまいと
大はしゃぎで、かまくらや雪だるまを作ってる写真が
フェイスブックにも数多く投稿されていた。
午前中、うちの前を横切ったのは
ソリに興じる父子と、犬を散歩させているご婦人のみ。
車は一台も通らない。
奇跡的な静寂の中、時折り枝からボタリと落ちる
雪の音が大きく響く。
と、ここまでは格調高く書きましたが、
ここから一気に転調いたします。
こういう荒天になると、俄然はりきるタイプがいる。
台風とか、嵐とか、大雪とか…
ニュースを聞いて、「岡山にだんだん近づいとる」とか
「あしたは、この冬一番の冷え込み」とかうるさい。
いっときは『放射冷却』という言葉が気に入り、
再々得意げに使うのには閉口した。
そう、そのタイプとは、わが亭主である。
見ていると、荒天になるのが、まるでうれしいのかしらと思える。
本人は「そんなことは断じてない!」と言っているが、怪しい。
非常時や緊急時には気もちが高揚して、
ある種のアドレナリンが出るのでは、とにらんでいる。
快感アドレナリンだ。
その日、彼はわが家のカーポートの前を、せっせと雪かきをしてくれた。
私の車が出られるように、との配慮からだ。
ありがたいことである。
ついでに、お隣やお向かいさんの前も雪かきサービス。
ご親切にどうも。
見上げた根性である。
その時、だれがこの20分後に起こる悲劇を
想像できたであろうか。
そういえば昨夜、私に自慢していたっけ。
「ワイパーを立ててきた」
「なんか、それイミあるん?」
「ワイパーがな、雪の重みでひずむのを防ぐためなんじゃが」
「ふーん」
いまから思えば、あれは前兆だった。
彼は自分の駐車場(露天です)へ行って
フロントやリアに積もった雪を落としていた。
昨夜立てたワイパーの具合をチェックしながら。
そして、車止めに作られた低いブロックに上り、
足を滑らせて。。。
えーとですね、
いま、血だらけになった手と鼻の頭を洗っています。
最近、彼は立て続けに顔を怪我しています。
一番最初は、タクシーに乗る時。
後ろのトランクを開けるときに、
自分の顔も一緒にこすりながら開けました。
東北の田舎町で「夜は真っ暗で、なんも見えんかったから」
だそうです。
二番めは、病院で設備機器の取り付けに立ち会っていた時
起き上がって体をひねったところにブツが迫っており
左目横を強打。またしても流血の惨事になりました。
しかし、幸いというか、なんというか
場所が病院だったので、そのまま担ぎ込まれ
ソッコー処置。
「アンタ運がよかった、目の直撃だと大変なことになっていた」
といわれて、キモを冷やしたという。
これで、実に三度目。
「呪われとる」というのが持論です。
そして、あんなに自慢気に言ってたワイパーですが、
ぽっきり折れた状態で庭に立てかけてありました。
ふむ。
ヤツは、これを持ちながら落下したに違いありません。
玄関に脱ぎすててあった黒のゴム長。
この子だけが、ご主人の一部始終を見ていました。
ご苦労さん